用語集
相続の言葉を
ふだんの日本語で。
役所や金融機関で使われる言葉を、日常の言葉で解説します。71語を収録しています。
戸籍まわり
- 戸籍謄本(全部事項証明書)
一つの戸籍に載っている全員の身分事項(出生・婚姻・死亡など)を写した公的証明。相続では「誰が相続人か」を証明する唯一の書類。手数料450円/通。
- 戸籍抄本(個人事項証明書)
戸籍のうち1人分だけを抜き出したもの。相続手続きでは原則使わない(全員分が必要なので謄本)。
- 除籍謄本
戸籍に載っていた人が全員いなくなった(死亡・転籍・婚姻で抜けた)戸籍の写し。被相続人の死亡が載っている最後の戸籍は、たいてい除籍。手数料750円/通。
- 改製原戸籍(かいせいはらこせき/げんこせき)
法律が変わって戸籍の様式が作り直されたときの、作り直す前の古い戸籍。主に1994年(平成6年)の電算化と1957年(昭和32年)の改製で発生。作り直しの際に載らなかった情報(既に抜けた子など)が古い方にしか残っていないので、相続では必ず要る。手数料750円/通。
- 出生から死亡までの連続した戸籍
被相続人が生まれてから死ぬまでに在籍した戸籍を、途切れなく全部そろえること。転籍・婚姻・改製のたびに1通増える。普通の家で3〜6通、兄弟姉妹相続では被相続人の両親の分も要るので20〜40通になることがある。銀行・法務局が求める。
- 戸籍の附票
その戸籍にいる間の住所の履歴。住民票の除票が取れない(保存期間切れ)ときや、登記名義人の住所と現住所をつなぐときに使う。
- 住民票の除票
死亡で住民登録が消えた人の住民票。死亡の事実と最後の住所を証明する。
- 広域交付
2024年3月1日から、本籍地でない市区町村の窓口でも戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を請求できる制度。**本人・配偶者・直系(親・祖父母・子・孫)の分のみ**。兄弟姉妹・甥姪の戸籍は取れない。窓口のみで郵送不可、顔写真付き身分証が必要。→ §3-6
- 本籍地
戸籍が置かれている市区町村。住所とは別。転籍すると戸籍が新しく作られる。
相続人まわり
- 被相続人
亡くなった人。
- 法定相続人
民法で決まっている相続する人。配偶者は常に相続人。それに加えて第1順位が子、子がいなければ第2順位が親(直系尊属)、それもいなければ第3順位が兄弟姉妹。
- 法定相続分
遺言や協議がないときの取り分。配偶者+子なら1/2ずつ(子が複数なら1/2を頭割り)。配偶者+親なら2/3と1/3。配偶者+兄弟姉妹なら3/4と1/4。
- 代襲相続(だいしゅうそうぞく)
本来相続人になる子(または兄弟姉妹)が先に死んでいるとき、その子(孫・甥姪)が代わりに相続すること。子の場合は孫・ひ孫と続くが、兄弟姉妹の場合は甥姪まで(一代限り)。戸籍が増える主因の一つ。
- 数次相続(すうじそうぞく)
相続手続きが終わらないうちに相続人も死んで、相続が二重三重に重なること。祖父名義のまま放置された土地で典型的に起きる。相続人が十数人に膨れ、全員の実印が要る。→ ケースE
- 相続関係説明図
被相続人と相続人の関係を家系図の形で書いたもの。法務局に出すと戸籍の原本を返してもらえる。法定相続情報一覧図と違って公的な認証はない。
- 法定相続情報一覧図
相続関係説明図を法務局(登記官)が戸籍で確認して認証文を付けたもの。**無料**で必要な枚数もらえ、以後は戸籍の束の代わりにこの1枚で銀行・証券・年金・税務署の手続きができる(2017年開始)。申出から交付まで1〜2週間。→ §3-5
- 相続欠格・廃除
被相続人を殺した、遺言を偽造した(欠格)、虐待・重大な侮辱をした(廃除。家裁の審判)場合に相続権を失う。実務で出会うことは稀。
- 特別受益
生前に特定の相続人だけが受けた大きな贈与(住宅資金、開業資金など)。分割の際に「もらった分」として計算に戻す。
- 寄与分
被相続人の財産維持・増加に特別に貢献した相続人(家業を無給で手伝った、介護で費用を負担した等)の取り分を増やすこと。
- 特別寄与料
相続人でない親族(長男の妻など)が無償で介護等をした場合に、相続人に金銭を請求できる制度(2019年〜)。
相続するか・しないか
- 単純承認
財産も借金も全部引き継ぐこと。何もしなければ3ヶ月経過で自動的にこうなる。遺産を使ったり処分したりしても単純承認とみなされる。
- 相続放棄
最初から相続人でなかったことにする手続き。家庭裁判所に「申述」する。**相続開始を知ってから3ヶ月以内**(熟慮期間)。借金だけでなく財産も一切受け取れない。放棄すると次の順位の人に相続権が移る(親→兄弟姉妹)ので、連絡しないと親族に借金が飛ぶ。2024年は308,753件受理。
- 限定承認
プラスの財産の範囲でだけ借金を払う方法。相続人**全員**で申述する必要があり、手続きが重いので実務ではほとんど使われない。
- 熟慮期間の伸長
財産調査が間に合わないとき、家裁に申し立てて3ヶ月を延ばしてもらう制度。
- 債務控除
相続税の計算で、借入金・未払いの税金・葬式費用を財産から差し引くこと。
遺言まわり
- 自筆証書遺言
全文・日付・氏名を自分で手書きして押印した遺言(財産目録はパソコン可)。家で保管すると死後に**検認**が要る。法務局に預けると検認不要。
- 公正証書遺言
公証役場で公証人が作る遺言。証人2人が要る。原本は公証役場が保管し、偽造・紛失の心配がなく検認も不要。作成は年12万件超。手数料は財産額に応じた公証人手数料。
- 自筆証書遺言書保管制度
自筆の遺言書を法務局が預かる制度(2020年7月〜)。手数料3,900円。検認不要、死亡時に指定した相続人へ通知が届く。2024年の申請は23,419件。
- 検認
家で保管されていた自筆証書遺言を、家庭裁判所で相続人立会いのもと開封・確認する手続き。遺言の有効・無効を判断するものではなく「この状態で存在した」ことを記録するだけ。検認を経ないと銀行・法務局が受け付けない。2024年は23,436件(新受)。
- 遺言執行者
遺言の内容を実現する人。遺言で指定されるか、家裁が選ぶ。執行者がいると相続人全員の印鑑なしで手続きが進む。
- 遺贈
遺言で相続人以外の人や団体に財産を渡すこと。
- 遺留分
兄弟姉妹以外の法定相続人に保証された最低限の取り分(原則、法定相続分の1/2。親のみの場合は1/3)。遺言で全財産を他人に渡されても、遺留分侵害額を金銭で請求できる。請求期限は知ってから1年。
- 遺言検索システム
公正証書遺言が作られているか、全国の公証役場で照会できる仕組み。相続人は無料。必要なのは死亡の記載がある戸籍、相続人であることを示す戸籍、身分証。
分ける
- 遺産分割協議
相続人**全員**で遺産の分け方を決める話し合い。1人でも欠けると無効。未成年や認知症の相続人がいれば特別代理人・成年後見人が要る。
- 遺産分割協議書
協議の結果を書面にし、相続人全員が署名・実印を押したもの。銀行・法務局・税務署に出す。作成には期限がないが、相続税申告は10ヶ月なので実質それが期限。
- 印鑑証明書
実印が本物であることの市区町村の証明。相続人全員分が要り、銀行は「発行から3〜6ヶ月以内」と有効期限を設けることが多い。
- 遺産分割調停・審判
協議がまとまらないとき家庭裁判所で話し合う(調停)。それでも決まらなければ裁判官が決める(審判)。2024年の新受は合わせて19,550件。
- 現物分割・代償分割・換価分割・共有分割
分け方の4類型。不動産をそのまま1人が取る(現物)、取った人が他の人に金を払う(代償)、売って金で分ける(換価)、共有名義にする(共有。後で揉めるので避けるのが実務の通例)。
- 配偶者居住権
配偶者が自宅に無償で住み続けられる権利(2020年〜)。所有権を子に、居住権を配偶者に分けられる。登記が必要。
金融機関まわり
- 口座凍結
金融機関が名義人の死亡を知った時点で入出金を止めること。役所から自動で連絡が行くわけではなく、遺族の申出や新聞の訃報で知る。引き落とし(公共料金等)も止まる。
- 仮払い制度(遺産分割前の相続預金の払戻し制度)
遺産分割前でも、相続人1人が単独で預金を引き出せる制度(2019年7月〜、民法909条の2)。上限は **口座残高×1/3×その人の法定相続分、かつ1金融機関あたり150万円**。葬儀費用・当面の生活費のため。
- 残高証明書
死亡日時点の預金残高を金融機関が証明する書類。相続税申告と遺産分割の基礎。行ごとに請求し、手数料がかかる。
- 相続届(相続手続依頼書)
金融機関所定の払戻し用紙。名称も様式も行ごとに違う。相続人全員の署名・実印が必要なことが多い。
- 証券保管振替機構(ほふり)の開示請求
どの証券会社に故人の株式口座があるか分からないとき、登録済加入者情報を照会する仕組み。有料。
- 生命保険契約照会制度
生命保険協会が全社に一括で契約の有無を照会する制度(2021年〜)。2024年度7,467件利用。有料。
- 団体信用生命保険(団信)
住宅ローン契約者が死亡すると残債がゼロになる保険。ローンが残る家は、まず団信の有無を確認する。
不動産・登記まわり
- 相続登記
不動産の名義を被相続人から相続人に変える登記。**2024年4月1日から義務化**。相続を知ってから3年以内、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料。施行前の相続分は2027年3月31日まで。
- 相続人申告登記
3年以内に遺産分割がまとまらないとき、「自分は相続人です」と法務局に申し出るだけで登記義務を果たしたことにする簡易制度(2024年4月〜)。登録免許税不要。**権利を移す登記ではないので、売却・担保設定はできない**。2024年4〜12月で7,709件。
- 登録免許税
登記にかかる国税。相続登記は固定資産税評価額×0.4%。評価額100万円以下の土地は2027年3月31日まで免税。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
不動産の所有者・権利関係の公的証明。法務局またはオンラインで取れる。
- 固定資産評価証明書・名寄帳
市区町村が出す不動産の評価額の証明と、その人が所有する不動産の一覧。登記と相続税申告に使う。故人の不動産を漏れなく洗い出す第一歩。
- 共有
1つの不動産を複数人で持つ状態。相続で安易に共有にすると、次の相続で持分が細分化し、売却に全員の同意が要るようになる。
- 相続土地国庫帰属制度
要らない土地を国に引き取ってもらう制度(2023年〜)。審査手数料1.4万円+10年分の管理費相当の負担金(原則20万円〜)。建物付きや境界不明の土地は対象外。
- 空家等対策特別措置法(特定空家・管理不全空家)
放置された空き家を自治体が指導・勧告できる法律。勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が最大6倍になる。
税まわり
- 準確定申告
故人の1月1日から死亡日までの所得税の申告。**死亡を知った日の翌日から4ヶ月以内**。年金だけなら原則不要、事業・不動産所得や医療費控除で還付がある場合は必要。
- 相続税の基礎控除
3,000万円+600万円×法定相続人の数。これ以下なら申告不要。3人なら4,800万円。
- 課税価格
相続税の計算のもとになる金額。財産の評価額から債務・葬式費用を引き、生前贈与の一部を足したもの。
- 小規模宅地等の特例
故人の自宅の敷地を配偶者や同居の子が相続すると、**330㎡まで評価額を80%減額**できる制度(事業用400㎡・80%、貸付用200㎡・50%)。この特例で申告不要になる家が多いが、**特例を使うには申告が必須**(使った結果ゼロでも出す)。
- 配偶者の税額軽減
配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円か法定相続分のどちらか大きい額まで相続税がかからない。これも申告が要件。
- 生命保険金の非課税枠
死亡保険金のうち500万円×法定相続人数までは相続税がかからない。
- 相続時精算課税
生前贈与を相続時にまとめて課税する選択制度。2024年から年110万円の基礎控除が付いた。
- 申告事績の「課税割合」
死亡者のうち相続税の税額がある申告をした割合。2024年分は10.4%。
窓口・制度
- おくやみコーナー
市区町村で、死亡後の役所手続き(保険・年金・世帯主変更・葬祭費など)を1つの窓口でまとめて案内・受付する仕組み。2020年度に169自治体、人口5万人以上では6割超(2024年)。
- 死亡・相続ワンストップサービス
デジタル庁・内閣官房が進める、死亡関連手続きのデジタル化・一元化の取り組み。おくやみコーナーの支援ナビはこの一環。
- 葬祭費・埋葬料
国民健康保険・後期高齢者医療なら「葬祭費」(自治体により3〜7万円程度。**要検証**)、健康保険なら「埋葬料」(5万円)が喪主に支給される。申請しないともらえない。2年で時効。
- 未支給年金
死亡月分までの年金で、まだ振り込まれていない分。生計を同じくしていた遺族が請求する。5年で時効。
- 遺族年金
遺族基礎年金(子のある配偶者・子)と遺族厚生年金(老齢厚生年金の3/4相当)。年金事務所に請求。5年で時効。
- 高額療養費
死亡前の入院で自己負担上限を超えた分の還付。相続人が請求できる。2年で時効。
- 成年後見・特別代理人
相続人に認知症の人や未成年がいると、本人は協議に参加できない。家裁で後見人や特別代理人を選ぶ必要があり、数ヶ月かかる。
- 遺産整理業務
信託銀行が相続手続き全体の窓口を引き受けるサービス。最低報酬110万円(税込)+財産比例。登記・申告は提携士業に別料金で出す。
- 非弁行為
弁護士でない者が報酬目的で法律事務(交渉・代理)を行うこと(弁護士法72条)。遺産分割の交渉に入ると該当。相続OSの線引きの根拠。→ §4